アルコール依存症者37例に対する神経耳科学的検討を行った. 初回検査時の平均断酒期間は21.4日, 再検査時の平均断酒期間は82.0日であった. 重心動揺検査の結果より小脳前葉と脊髄小脳路の障害が疑われた. 從来から指摘されている体平衡の障害のほかに眼球運動の多彩な障害が認められた. その結果からは前庭小脳を中心とする小脳障害とさらに脳幹障害の存在も疑われた. 約3カ月間の断酒後の再検査時には重心動揺検査の一部と眼球運動検査のすべての項目で改善が認められた. アルコールによる中枢神経障害に対する断酒の効果を, 神経耳科学的検査で他覚的に捕捉することが可能であった.