日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報
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総説
ダニ舌下免疫療法による長期寛解機序と最近の知見
櫻井 大樹
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2021 年 124 巻 10 号 p. 1341-1347

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抄録

 通年性アレルギー性鼻炎の増加は鈍化しているが, 国民の約4人に1人が発症していることが示唆されている. 不快な鼻の症状だけでなく睡眠障害や QOL への影響も大きい. アレルギー性鼻炎の自然寛解は少なく, 長期的な治療介入が必要である状況に対し, 根本治療としての舌下免疫療法は重要な位置づけにある. 舌下免疫療法は, 皮下免疫療法と比較し安全性と利便性に優れており, 現在ダニおよびスギ花粉を原因とするアレルギー性鼻炎に対し治療可能である. ダニに対する舌下免疫療法は2015年に保険適応となり, 家塵ダニを原因とするアレルギー性鼻炎に対し有効であり, 一般の薬物治療では誘導できない長期的な寛解が期待できる治療法である. 2018年から小児へも適応が拡大されている. ダニ通年性アレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法の有効性については, 近年の臨床試験からエビデンスが示されており, 成人だけでなく小児においても有効性が期待できる. 現在, アレルギー性鼻炎は喘息のリスクファクターとされるが, 舌下免疫療法の施行は喘息発症を抑制する可能性も示唆されている. 舌下免疫療法は安定した治療効果を得るために3年以上の長期の治療期間が推奨されている. 近年, 舌下免疫療法の作用を科学的に示す報告も多く出されており, 効果との関連を示すマーカーの検討も行われている. 口腔粘膜への抗原投与により, 特異的な免疫寛容を誘導する応答が開始される. 投与される抗原量や継続される投与期間は重要な因子であり, 治療効果と終了後の効果持続に影響するため, 適切な用量を十分に継続する必要があると考えられる. 舌下免疫療法における抗原の長期投与の意義や作用機序の理解は, 治療効果を適切に引き出すために役立つ可能性がある.

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