日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報
Online ISSN : 2436-5866
Print ISSN : 2436-5793
最新号
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原著
  • 神林 潤一, 小林 俊光, 入間田 美保子, 大山 健二
    原稿種別: 原著
    2024 年 127 巻 6 号 p. 707-715
    発行日: 2024/06/20
    公開日: 2024/07/02
    ジャーナル フリー

     ムコーズス中耳炎は抗菌薬が発達した現在も頭蓋内合併症を併発するなど重症例が報告されているが, それらは基幹病院からが大部分で, 患者が最初に受診する耳鼻咽喉科一般診療所における診療の実態はよく知られていない. そこで今回, 過去19年11カ月間に市中の耳鼻咽喉科一般診療所で経験したムコーズス中耳炎新鮮例103例の検討を行った. 急性中耳炎全症例に占める割合は約0.3%ながら決して稀有なものではない. 0~88歳までの全年代にわたり発症が見られたが, 15歳以下の小児が47%を占めた. 一方で重症化による入院例の70%は成人であった. 診断には長時間続く激しい耳痛, 鼓膜の発赤 ・ 膨隆, 水疱形成や外耳道腫脹, 鼓膜切開時の茶褐色, 漿液性貯留液の噴出などの特徴的所見が参考になった. 年齢が高いほど遷延化例, 重症化例が多く, 骨導閾値上昇を来した症例は治療期間が延長した. ペニシリン系以外の抗菌薬が初期に投与された群 (23例) と, 最初からペニシリン系を投与された群 (53例) との間に治療期間の差は見られなかった. 早期 (平均2.6日) にペニシリン系抗菌薬への変更と速やかな鼓膜切開が行われた結果と思われる. 第一線の耳鼻咽喉科医はムコーズス中耳炎の存在を念頭におき, 適切な抗菌薬の選択と速やかな鼓膜切開を行うことにより, 病院に送らざるを得なくなる症例を減らすよう努めるべきである.

  • 徳留 卓俊, 洲崎 勲夫, 丸山 祐樹, 上村 佐和, 小林 斉, 嶋根 俊和
    原稿種別: 原著
    2024 年 127 巻 6 号 p. 716-720
    発行日: 2024/06/20
    公開日: 2024/07/02
    ジャーナル フリー

     眼窩蜂窩織炎は眼窩感染症で, 視力障害や眼球運動障害を起し, 髄膜炎, 頭蓋内膿瘍に発展することもある. 今回, 鼻涙管の涙石症による鼻涙管閉塞を契機に涙嚢炎および眼窩蜂窩織炎を生じた1例を経験した. 症例は77歳女性, 左眼瞼腫脹, 視力障害を自覚し当院を受診した. CT で左涙嚢の腫脹と周囲眼窩内の炎症所見, 左鼻涙管内の石灰化病変を認めた. 緊急で内視鏡下鼻副鼻腔手術を施行した. 鼻涙管を切開し石灰化病変を摘出し排膿を得た. 病理検査で石灰化病変は真菌塊であった. 鼻涙管内の菌塊を涙石といい, 鼻涙管閉塞の原因となる. 早期手術により視機能障害などの後遺症はなく治癒した.

  • 岡田 花子, 丹羽 一友, 田辺 美樹子, 田中 玲子, 川野 雅子, 伊藤 華純, 吉田 興平, 大氣 大和, 桑原 達, 佐藤 要, 磯 ...
    原稿種別: 原著
    2024 年 127 巻 6 号 p. 721-725
    発行日: 2024/06/20
    公開日: 2024/07/02
    ジャーナル フリー

     Nuclear protein testis(NUT) carcinoma は頭頸部領域では日本で11例ほどしか報告のない希少癌である. 今回われわれは頸部に発生した NUT carcinoma の症例を経験した. 症例は51歳男性. 左顎下部の腫脹が出現し, 組織生検で低分化扁平上皮癌を疑われた. 気道狭窄のため気管切開を先行し, 頸部郭清術を行った. 術後17日目に NUT carcinoma と病理診断された. その後腫瘍は急速に再増大し切除不能となり, 術後36日目にペムブロリズマブ1コースを施行したが効果を得られず, 術後45日目に死亡した. NUT carcinoma は非常にまれであり, 本症例では診断や治療に難渋したため, 報告する.

  • 内田 真哉, 森岡 繁文
    原稿種別: 原著
    2024 年 127 巻 6 号 p. 726-730
    発行日: 2024/06/20
    公開日: 2024/07/02
    ジャーナル フリー

     耳科手術における経外耳道的内視鏡下耳科手術 (TEES) の重要性が高まる中, TEES で上鼓室・乳突洞開放術を行う場合, ほぼ全例が片手操作で上鼓室側壁再建を行う必要がある. この手技は両手が使える顕微鏡手術と比べると難易度が高くなるため, TEES でも比較的容易に, 正確に行える鋳型を用いた方法を考案した.

     本法では骨ろうを用いて上鼓室側壁欠損部の鋳型を作製し, それを使って形成したアイランド型軟骨で上鼓室側壁再建を行う. 本稿では慢性中耳炎例に対する適応例を報告するが, 既存の安価な材料を利用し, 正確に再建できるため TEES での有用性は高いと考えられた.

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