日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報
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総説
アレルギー性鼻炎の治療戦略 Up-to-date
檜垣 貴哉
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2021 年 124 巻 8 号 p. 1144-1149

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抄録

 アレルギー性鼻炎は, 非常に一般的な疾患であり, 耳鼻咽喉科医にとって診断と治療は日常茶飯事と言っても良い. しかし, 本邦におけるアレルギー性鼻炎は年々罹患率が上昇し, 低年齢化が進みより大きな健康上の問題となっている. アレルギー性鼻炎の診療においては「鼻アレルギー診療ガイドライン」が2020年版に改訂され種々の update がなされた. これまで行ってきた治療法に関する新しい情報と, 新規に利用できるようになった治療法を整理することでより質の高い診療ができると考えられる.

 アレルギー性鼻炎は報告によっては全体で49.2%, スギ花粉症で38.8%の有病率に達することが明らかにされており, 過去20年で著増した. また, 10歳代の若年層でスギ花粉症患者が急増しており, 将来的により大きな問題になってくることが予想される. 典型例が増加する中, 一方では診断や抗原の同定に苦労する局所アレルギー性鼻炎も指摘されており, 専門家の耳鼻咽喉科医としては種々のタイプのアレルギー性鼻炎に対応できる必要がある.

 アレルギー性鼻炎の治療で最も重要である薬物治療に関しては, 抗ヒスタミン薬の増量についてガイドラインでも触れられるようになった. 初期療法の有効性については各種エビデンスについて述べる. また, 重症の花粉症における新規薬剤となる抗 IgE モノクローナル抗体である Omalizumab が登場した. 通常治療でコントロール不良な患者にとって貴重な選択肢となる可能性がある.

 有病率の上昇が問題となっている中では, 唯一アレルギー性鼻炎を根本的に改善させ得るアレルゲン免疫療法の重要性が高まる. 近年, 舌下免疫療法が定着しつつあるが, その有効性について紹介する.

 耳鼻咽喉科医は保存的加療とともに外科的治療について理解することで治療効果を向上させることができる. アレルギーは手術で改善する疾患ではないが, 鼻腔形態を改善させる鼻中隔手術や下鼻甲介手術で患者の QOL の改善を図ることができる.

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