日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報
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総説
軟性内視鏡の感染制御
中野 隆史岡野 高之
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2022 年 125 巻 9 号 p. 1344-1352

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抄録

 医療器具の消毒に関しては, クリティカル・セミクリティカル・ノンクリティカル器具に分けて考えられ, 軟性内視鏡はセミクリティカル器具に分類されるため高水準消毒が必要となる. 高水準消毒に用いられる高水準消毒薬の代表としてグルタラールがあるが, 種々の問題から使用制限傾向であり, 代替物質・代替法が求められている. 消化器内視鏡は軟性内視鏡のパイオニアであり, 1950年代に胃カメラが開発されて以降, 改良が加えられ臨床現場で広く用いられている. 消化器内視鏡の歴史において感染事故が報告されているが, これを防ぐために洗浄・消毒に関するガイドラインが策定され, 改良されている. そのような状況下において, 強酸性電解水を用いた消毒が注目されている. 強酸性電解水は広い抗微生物スペクトルと高い安全性を併せ持つ消毒薬であるが, 有効塩素濃度が高いと金属腐食性を持ち, 有効塩素濃度が低いと十分な消毒効果が得られないため, 適切な使用が必須であり, 現在では強酸性電解水の pH, 酸化還元電位, 有効塩素濃度の3物性を常時モニタリングすることが可能な自動洗浄消毒器が実用化されている. 一方, 耳鼻咽喉科・頭頸部外科診療においても軟性内視鏡は汎用されており, 消化器内視鏡と比べて, よりさまざまな施設で鎮静なしで用いられ, 1日あたりの使用回数も多く, 感染性微生物を含んだ粘膜に触れる頻度が高いと考えられる. このような状況下で「耳鼻咽喉科内視鏡の感染制御に関する手引き」が出版され, 洗浄・消毒に関する標準化の第一歩となった. さらに近年の新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) のアウトブレイクに際し, 耳鼻咽喉科・頭頸部外科の内視鏡診療における感染対策が大きく見直されようとしている.

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© 2022 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
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