日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報
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総説
新型コロナウイルス感染症における味覚異常
任 智美
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2022 年 125 巻 9 号 p. 1358-1365

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抄録

 従来, 感冒罹患後の味覚障害は嗅覚障害とともに知られているが, 機序は明確にされていない. COVID-19 における味覚異常の病態として, 嗅覚障害による風味障害, ウイルスによる直接的受容器障害, 炎症性サイトカイン暴露, 唾液構成の変化などが挙げられる. 食事の際に, “味” と表現されるものは, 純粋な “味覚” ではなく, さまざまな感覚が統合されて得られる感覚ではあるが, 一般的に “食事の味” の異常は “味覚異常” として認識されやすい. 風味障害患者は,「素材の細やかな味, コーヒー, カレーなどの味が分からない」と訴える. 本来嗅覚と味覚は中枢で相互に作用するため, 自覚的な評価として混合しやすく, 客観的に嗅覚味覚機能を評価し, 総合的に状態を把握することが必須といえる. 各国から多数 COVID-19 における味覚障害の出現率など報告されているものの厳密には「味覚・風味異常」である. 味覚受容器障害の発症機序として, アンギオテンシン変換酵素Ⅱ (ACE2), TMPRSS2, furin の関与が挙げられている. 組織学的にも味細胞に ACE2・TMPRSS2・furin の発現が陽性であったという報告が見られる.

 COVID-19 における嗅覚味覚障害はいまだ不明な点も多い. 初期は, COVID-19 における嗅覚味覚障害の症状や検査は, 早期診断に有用であるかと論議されたが, 今後は, 後遺症として残存する症状の対応などが求められる.

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