2023 年 126 巻 11 号 p. 1211-1216
末梢性顔面神経麻痺は早期の専門的評価と治療のため, 耳鼻咽喉科頭頸部外科 (耳鼻科) への受診が望ましいが, 一般的に顔面神経麻痺を耳鼻科の疾患と考えている人は多くなく, 最初に受診する診療科として選択されにくい. また末梢性顔面神経麻痺の報告は多いが, 中枢性を含めた症例の検討は極めて限定的である. このためわれわれは地域基幹病院である相澤病院の全診療科を受診した中枢性を含めた顔面神経麻痺の検討を行った. 2016年1月~2020年12月の5年間に顔面神経麻痺の発症が確認できた患者は374例であった. 末梢性は258例 (69%), 中枢性は108例 (29%), 分類不能は8例 (20%) であった. 末梢性の最も多い原因としては Bell 麻痺が211例 (81%), 中枢性の最も多い原因は脳梗塞で72例 (67%) であった. 患者が初診として受診する診療科は救急科が多く, 末梢性が40%, 中枢性が73%であり, 末梢性に限っても耳鼻科に受診した患者は16%であった. 末梢性・中枢性を問わず顔面神経麻痺の患者は耳鼻科以外の診療科を受診することが多く, 末梢性顔面神経麻痺の適切な治療や耳鼻科への受診につなげるためには他科との連携が必要である.