日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報
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原著
眼窩下壁骨折の術後複視改善についての検討
秋山 貢佐寒川 泰星川 広史
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2023 年 126 巻 3 号 p. 194-199

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抄録

 眼窩骨骨折では下壁骨折の頻度が最多である. 複視が残存する症例では整復術が適応となるが, 下壁型は術後 3 カ月以内に複視が改善する例が多いとされる. 本検討では手術を行った下壁単独骨折22例を対象として, 複視の改善経過, 治癒率, 治癒に関連する因子について検討を行った. 複視評価には Hess 面積比 (percentage of Hess area ratio; HAR%) および複視グレード (G) を用い, 術前, 退院前, 術後1カ月, 術後 3 カ月の時点で評価を行った. 各時点での平均 HAR%は59%, 69%, 78%, 87%と直線的な改善を認め, 複視 G も同様に改善を認めた. HAR% 85%以上かつ複視 G1 以下に改善したものを治癒と定義すると, 3 カ月以内の治癒率は22例中16例 (73%) であった. 非治癒と判定したものは 6 カ月目に再評価を行い, 最終的な治癒率は85.7% (18/21例) となった. また術前 HAR%, 複視 G が統計学的に治癒に関連する因子であり, 術前複視 G3 が複視遷延の独立因子として同定された. 本検討では下壁型骨折に伴う複視の多くは術後 3 カ月以内に日常生活に支障を来さない程度に改善するが, 術前に重度の複視がある場合には改善が遷延することが示唆された. 今後症例を蓄積し, より詳細に治癒過程や予後規定因子などを検討する必要がある.

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