日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報
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総説
嚥下改善手術 (特に輪状咽頭筋切断術と喉頭挙上術について)
熊井 良彦
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2024 年 127 巻 1 号 p. 24-26

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抄録

 重度の嚥下障害 (特に誤嚥性肺炎を反復するなどの場合) に対する手術は, 嚥下障害の病態に応じて, 喉頭の発声機能を ① 保存する手術 (嚥下改善手術), ② 犠牲にする手術 (誤嚥防止術) に大別される. 嚥下改善手術は, 発声機能を障害せずに嚥下機能の改善を図る手術で, 下降期型障害に用いられる輪状咽頭筋切断術と喉頭挙上期障害に対して用いられる喉頭挙上術が代表的である. 本稿では嚥下改善手術としての輪状咽頭筋切断術, 喉頭挙上術について解説する.

 ■ 輪状咽頭筋切断術

 本術式は咽頭期嚥下の惹起性が良好で喉頭麻痺はなく, 輪状咽頭筋の弛緩不全 (嚥下圧はある程度保たれる) が認められるか, あるいは器質的狭窄のみの嚥下障害例で, 有効である. 以上の要件をいずれも満たさない場合, あるいは胃・食道-咽頭逆流により重篤な嚥下性肺炎の既往がある場合は禁忌となる.

 ■ 喉頭挙上術

 本術式は正しいタイミングの喉頭挙上運動と舌根運動のいずれかが障害された場合に, それらの運動を代償・改善する目的で用いられる. 挙上を補助するために, 近接縫縮する解剖学的部位と, 喉頭を挙上させる方向が重要である. 特に喉頭の前方への運動性の程度と嚥下反射惹起のタイミングに基づき, 運動性の低下している部分と程度がより正常近くに回復するように工夫する.

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