日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報
Online ISSN : 2436-5866
Print ISSN : 2436-5793
総会講演
多職種協同で嚥下障害を診る
―多職種介入 NST 嚥下チームの取り組み, 耳鼻咽喉科頭頸部外科医の役割と課題―
河本 勝之
著者情報
ジャーナル フリー

2025 年 128 巻 1 号 p. 1-6

詳細
抄録

 嚥下障害の原因は多岐にわたり, 診断と評価, リハビリテーションや手術等の治療, 誤嚥性肺炎の治療, 栄養と水分管理, 退院後の生活調整など, やるべきことも多岐にわたる. 医師だけでは対応困難のため, 嚥下障害には多職種介入が求められる. また高齢化社会の到来とともに誤嚥性肺炎での入院は増えている. 絶食の期間が長くなれば在院期間は延長し, 患者の消化管粘膜の萎縮等の合併症が起こるため, 早期に嚥下機能評価が望まれる. 当院では入院時全例の嚥下スクリーニングを行い, 嚥下障害のリスク患者の拾い上げを行っている. リスクありに該当する患者は嚥下外来を受診し, 嚥下内視鏡検査 (VE) によるスコアによって摂食機能療法の適応を決定する. VE5点以上は多職種連携 NST (Nutrition Support Team) 内の嚥下チームがフォローする. 保存的加療で改善がない場合, 手術治療を検討する.

 本年4月から同一法人内の慢性期病院に摂食嚥下センターを設立した. 嚥下障害では院外との連携が必要で, 地域包括病棟を有する慢性期病院では特にそこが重要視される. 細かな施設間連携を行うためには医療福祉士の情報と入退院調整が鍵となる.

 本稿では多職種介入 NST 嚥下チームの取り組みと, 慢性期病院の摂食嚥下センターの活動について報告し, 耳鼻咽喉科頭頸部外科医が求められる役割と課題について述べる. これから嚥下に携わろうとする医師の参考になれば幸いである.

著者関連情報
© 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
次の記事
feedback
Top