抄録
1. 七種ノ純可臭性嗅素ヲ以テ過度ニ嗅刺戟ヲ持續スル場合ニハ蛙ノ嗅器ニ一定ノ退行性變化ヲ惹起シ得.
2. 其嗅器ニ於ケル變化ハ主トシテ嗅細胞及ビ嗅神經ニ顯著ナリトス.
3. 本實驗ニ於テ變性嗅細胞ハ嗅粘膜部ニ散在性ニ存在ス. 特ニ毎常多數ニ變性嗅細胞ノ存在スルハ, 主鼻腔ニ於テ其斜皺襞ノ内壁, 嗅隆起ト外壁トノ間及ビ外壁入口部ニシテ嗅隆起, 外壁及ビ内壁ハ之ニ次グ. 主鼻腔下部及ビ上盲嚢部ハ其變化輕微ニシテ, 嗅隆起ト内壁トノ間ハ殆ンド變化ヲ認メズ.
4. 特ニ上記ノ變性嗅細胞ガ各嗅素ノ種類ニ依リテ各自異リタル一定ノ嗅粘膜部ニ占居スルガ如キコトナシ.
5. 嗅刺戟甚シク高度トナルモ尚變性嗅細胞間ニ多數ノ正常細胞ヲ混在セシム. 即各嗅素ニ對シ各特殊「エネルギー」ヲ有スル嗅細胞ノ存在ヲ示スモノ、如シ.
6. 本實驗ニ於テ嗅神經纖維ニ退行性變化ヲ惹起セシメ得.
7. 嗅神經ノ變性ハ刺戟ノ強大ナルニ從テ上行性ニ進行シ. 過度ノ嗅刺戟ニ因ル嗅器ノ變化ハ末梢性ナルヲ知リ得.
8. ボウマン氏腺ハ嗅刺戟ニ因リ其機能ノ亢奮ヲ示シ刺戟強大ナル場合ニハ其退行性變化ヲ招來ス.
9. ヤコブソン氏器ニハ過度ノ嗅刺戟ニ因リ毎常其嗅細胞自己ニ退行性變化ヲ證明シ得.
10. 嗅粘膜下色素ハ輕度ナル形態ノ變化ヲ招來スルコトアリ.
11. 本實驗ニ於テ其中樞部即嗅球ヲナス各層ニ輕度ノ退行性變化ヲ認メタリ而シテ嗅葉内ニハ殆ンド其變化ヲ認メズ.
12. 嗅刺戟ノ強度ナル場合ニ主鼻腔及ビ副鼻腔ニ炎症性變化ヲ惹起セラルヽコトアリ.