抄録
1)「コカイン」ニヨル一側迷路曠置性眼震及ビ代償性眼震ガ空間ニ於テ動物ノ頭位テ變ズル事ニヨリテ受クル影響ハ, 觀血的ニナセル一側迷路破壞性眼震及ビ代償性眼震ト同一ニシテ, 共間何等ノ差異ヲ認ムルコトナシ.
2) 一側迷路ヲ手術的ニ破壞シ或ハ「コカイン」ヲ用ヒテ曠置シ特發性眼震ヲ發來セル家兎或ハ海〓ノ健側下位ノ頭位ニ於テ, 其健殘迷路ヘ家兎ニハ卵圓窓ヲ通ジ, 海〓ノ場ハ中耳骨胞内ヘ「コカイン」液ヲ滴注スル時ハ, 垂直性眼偏位ノ消失スル時期ニ於テ頭位ノ影響ノタメ消失又ハ微弱トナレル眼震ハ再ビ出現ス. 此際速ニ動物ノ緊縛ヲ解キテ, 腰部ヲ把持シテ頭部ヲ下方ニ懸垂スルニ尚明ニ基礎捻轉 (Grunddrehung) ノ存在ヲ證明ス.
3) 家兎ノ一側迷路ヲ破壞シ直ニ健殘迷路ニ20%「コカイン」液0.1ccm. ヲ滴注スルニ各頭位何レモ數秒乃至10秒ニ亘ル一過性ノ振幅増大ヲ來ス, 唯健側上位ノ場合ニ於テハ必ズシモ増大セズ. 次デ振幅及振動回數ヲ減少ジ. 2-4分後ニ眼震ハ停止スルニ至ル.
4) 第一篇, 第二篇並ニ本篇ノ實驗成績ニ徴スルニ, 余ヲシテ頭位變化ノ一側迷路曠置性眼球震盪ニ及ボス一定ノ影響ハ, 健殘迷路ノ正圓嚢聽石機關ノ機能ニ由來スルヲ確認セシム.
