耳鼻咽喉科臨床
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百万ボルト電子顕微鏡の生物試料への応用
1) 内耳有毛細胞の観察
高坂 知節佐藤 雅弘郭 安雄田中 克彦
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1979 年 72 巻 5 号 p. 679-688

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抄録

1) 東北大学百万ボルト電顕室に設置されたJEM1000を用いて, 超高圧電子顕微鏡の内耳組織観察への応用法につき, (a) 切片の厚さ, (b) 染色方法, (c) 連続切片法の可能性, の諸点を中心に検討した.
2) 切片の厚さについては, 加速電圧1000kVで600nm~1000nmが最も良い解像の得られる範囲であることがわかった.
3) 超高圧下では, 600nm以下の超薄切片に, しばしばコントラストの低下や試料損傷等が生じた.
4) 1000nm以上の厚い切片では, 細胞小器官等の重複像や, 電子密度の増加があり, 像質の低下がみられた. しかし, 遠心性・求心性神経終末の鑑別等は行うことができた.
5) 厚切片の染色法について文献的に検討した. 内耳のように, リンパ腔の占める領域の極めて大きい組織においては, block 染色を行わなくても十分な染色性が得られることがわかった. われわれは, 酢酸ウラン・酢酸鉛の二重染色法を行った. 染色時間は, 酢酸ウランアルコニル液 (7分), 酢酸鉛水溶液 (10分) であった.
6) 厚切片による「連続切片法」は極めて利用価値の高い研究方法になり得ることを確認した.

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