1. 35例の頭頸部扁平上皮癌 (新鮮例16, 二次例19例) にNK-631投与を行い, 39.4%の有効率を得た. 新鮮例での有効率は56.3%であった. 従来のBLMとほぼ同等の効果とみる.
2. 投与法としては, NK-631 10mg (BLM 15mg と等力価) 週3回筋注法が主なものであった.
3. 投与量は新鮮症例に対しての平均は 92.5mg, 二次例では130.5mgであった.
4. 新鮮例にあっては, およそ100mg以内で後続治療に引継ぐことが肝要であろうと思われた.
5. 原発巣に対する治療は, 外向性発育を示す口腔癌に適応が大きい.
6. 組織像の経時的推移では, 7例中3例にIII度以上の効果をみたが, 投与量とは必ずしも平行しない.
7. リンパ節転移巣に対する効果は, 7例中2例に有効であり, そのうち1例は一時的縮小をみたが, 休薬で再増殖を示し, 1例は頸部廓清術で組織学的効果II
bを証明した.
8. 副作用は, BLMに時として見られる様な重篤な肺線維症が, 臨床上ならびに剖検上にも認められず, この点BLMより遥かに安全性が高いと評価された.
9. 放射線や手術と併用して治療効果を高め, あるいは再発率を低下させるか否かは, 今後なお検討すべき課題である.
10. 特に高齢者の口腔癌治療に当っては, Ra針治療を回避する手段として, NK-631に凍結外科を組合せることにより, 侵襲の少い治療法となることができれば幸いである.
抄録全体を表示