耳鼻咽喉科臨床
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放射線照射によって生じる感音性難聴に関する臨床的および実験的研究
山本 松紀
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1979 年 72 巻 8 号 p. 979-997

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抄録

内耳への放射線照射によって惹き起される感音性難聴には2つの Type がある. Type I は早期に一過性に出現して, その後回復する型, Type II は晩期になり出現して, 徐々に進行していく型である.
Type I の成因は, 照射によって生じた中耳炎が内耳に波及した為によって生じた acute toxic labyrinthitis, あるいは照射によって直接惹き起された. acute aseptic labyrinthitis が原因とみなされる. しかし中耳炎にせよ, acute aseptic labyrinthitis にせよ, 照射による血管系の早期反応である血管の透過性の亢進がその本態である.
Type II の成因としては, 照射による血管系の晩期変化である狭窄性病変がまず生じ, その結果感覚細胞をはじめとする膜迷路内の諸構造が虚血状態に陥り, それらの変性・萎縮, または消失がおこるためであると結論される.
従来, 照射による感音性難聴を論ずる場合には, 照射による感覚細胞の直接の傷害が問題にされることが多かったが, 著者の動物実験例およびヒトの側頭骨標本は共に, 感音性難聴が感覚細胞に対する放射線照射の直接の障害によって生ずると考えるよりも, 放射線による内耳の血管病変による二次変化として生ずる可能性が大であることを示している.

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