抄録
1) 1977年から1978年にかけて Hyperacusis を上訴として北野病院耳鼻咽喉科外来を受診した52例について, 原因疾患あるいは原因に関係する症候を整理すると, 顔神麻痺11例, recruitment 現象15例, 耳管, 鼻咽頭疾患8例, 無難聴性耳嗚5例, 自声強調6例であった.
2) 上記の顔神麻痺による Hyperacusis 11例のうち, あぶみ骨筋反射を比較的詳細に追究できた9例について, あぶみ骨筋反射障害と Hyperacusis の時期的相関を調べた. その結果, 従来より提唱されていた同時発生, 同時治癒という典型的経過を示したものは1例にすぎず, 他の8例は相互関係がかなり不定であった.
3) 上記52例とは別に, 対照群として使用した末梢性顔神麻痺50例について, あぶみ骨筋反射の有無と Hyperacusis の有無の相関を調べた. その結果, あぶみ骨筋反射 (+) にもかかわらず Hyperacusis を訴えたものが2例, 逆にあぶみ骨筋反射が (-) にもかかわらず Hyperacusis を訴えなかったものが17例あり, やはり相互関係は不定であった.
4) 先述の52例の Hyperacusis 症例のうち, 顔神麻痺以外による, 聴力損失15dB以内の片側 Hyperacusis 18例において, 両側のあぶみ骨筋反射の振幅を比較した. その結果, 患側に音刺激を与えて生じた健側のあぶみ骨筋反射の振幅がその逆よりも大という現象が9例 (50%) において認められた. これにより Hyperacusis という自覚症状を客観化する手がかりが得られたものと思われる.
5) Hyperacusis をさらに究明するには, あぶみ骨筋反射の有無のみでなく, 域値, 潜時などの定量的分析が心要であると思われる.