耳鼻咽喉科臨床
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高陰圧, 高振幅を示す tympanogram についての考察
横山 俊彦領木 郁子岡田 いく代
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1980 年 73 巻 6 号 p. 915-923

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抄録

正常聴力耳および各種聴力障害耳, 計1,470耳 (2才から15才) を対象に, Danplex ZA-20 を用いて記録した tympanogram のパターンを peak pressure, 最大振幅および tympanogram の形の3要素を組み合せて分類を行なった結果, 8つの型に類別でき, 便宜的にI型~VIII型と呼んだ. そのうち, 高陰圧, 高振幅を示したVI型, VII型は Jerger の分類に該当しなかったことに注目し, Jerger のC型と本質的に異なるものであるかどうかを, 病名, ピークの形, 鼓膜可動性, 他器種の impedance meter による tympanogram の clinical interpletations との比較, 聴力損失および伝音機能の6方面より検討を加えた.
1) VI型およびVII型は Jerger, Lidén のいうC型 (IV型, V型) と別個に取り扱うべき一群と見做され, これらの型を示すものは滲出性中耳炎, 耳管狭窄らのいわゆる耳管性難聴の治療中で, 鼓膜の弛緩したものに多くみられ (表1, 3), 聴力および伝音機能においてはIV型, V型のそれに比べて良好な傾向がみられた (図3). すなわち, VI型, VII型のパターンは主として滲出性中耳炎の治療中の症例に多く認められ, 滲出液の resolving stage の推定に役立つものと考察した.
2) VI型, VII型を示したうちの15耳に対して, 同時に Grason-Stadler otoadmittance meter 1720B を用いて tympanometry を行なったところ, B660-tympanogram のパターンがピークでW型に notching して (Lidén のD型), しかもピークが陰圧側に寄っている (Jerger. Lidén のC型), いわゆるC+D型という混合型が約40%に認められた (表4, 図2). このC+D型はVI型, VII型に対応する型と考えた.
3) tympanometry の面から, 幼小児の中耳滲出液の存在有無や耳管性難聴の程度を推定するには, negative pressue のみでは困難であり, peak compliance, ピークの形 (また gradient) を含める必要のあることを強調した.
4) 他国より輸入し, 市販されている impedance meter の測定条件, 表示はメーカーによってまちまちになされ, 国際的に規格の統一化が急がれるが, 現状として, これらの測定器の使用に際しては, 使用器種の種々の特性や使用上の特徴をよく知った上で臨床に役立てることが大切と思った.

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