耳鼻咽喉科臨床
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ABR異常と純音聴力図の関係について
八木 聰明馬場 俊吉
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1984 年 77 巻 2 号 p. 381-387

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抄録

聴性脳幹反応 (ABR) の異常, すなわち, 波の消失 (I波のみの反応, I~III波の反応, I~IV波の反応), あるいは, I~V波間潜時の著明延長例 (4.5msec以上) を示した, 26例37耳について, ABR異常の型と純音聴力検査結果を比較検討した.
I波のみの反応を示した12例14耳では, 純音聴力はほぼ正常から scale out まで, 様々であったが, 平均的には悪く, 平均聴力レベル (250Hzから4000Hzまでの5周波数平均) は, 52.5±25.1dBであった.
I~III波の反応を示した症例は, 4例4耳と少なく, 平均聴力レベルは26.8±12.9dBであった.
I~IV波の反応を示した症例は, 9例10耳であった. これらの症例では, 全例とも聴力は良く, 平均14.8±4.0OdBであった. I~V波間潜時の著明延長は, 8例9耳に認められたが, これらの聴力は, I波のみの反応を示した症例に類似しており, 平均41.7±29.4dBと悪かった. また, これらのうち, I~III波間の潜時延長が主であった症例 (4例) の平均聴力レベルは, 64dBととくに悪かった.
これら, ABR異常と純音聴力との関係は, 聴覚路のより末梢 (主として聴神経) の障害ではABRと純音聴力の程度はパラレル, つまり, ABRに異常があり, 純音聴力も悪い, であり, 脳幹部の障害では両者の関係は離反する. すなわち, ABRには明らかな異常があっても, 純音聴力域値は正常, あるいは, それに近い結果を示した.

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