2019 年 17 巻 p. 14-23
エリアケイパビリティー(AC)の強化方法に関する研究として行われた、フィリピンの漁業者の参加によるウシエビの放流事業の経緯と現状をレポートした。ウシエビの漁獲量の低下の原因は、過剰漁獲と生育場の環境劣化であった。放流プロジェクトには5名のボランティアが最後まで参加し、中間育成のマニュアルの作成等、現地での技術的問題はほぼ解決し、放流ウシエビは20%以上の再捕率であり,資源添加としての放流効果が確認された。事業の経済的妥当性も確認された。実際に、多くの人々がウシエビの漁獲量の増加を実感しており、行政を含めて、放流についての地域の理解は得られつつある。現在、放流事業は中断しているが、関係者は再開のための準備を行っており、現地の大学はACにかかわる放流事業とその学術研究への外国の研究者の参加を期待している。放流事業が再開された場合、ACの評価法・理論化のための研究フィールドとなることが期待できる。