2021 年 19 巻 p. 2-16
本研究は、タイ南部のチュンポン県のコーヒー栽培農家が近年直面している収穫労働の確保の困難性が生産に及ぼす影響を数量的に検証した。同地域では、もともと東北部から移り住んできた人々がコーヒー生産を担っており、収穫時期に必要となる労働力についてはこれまで東北部からの出稼ぎ労働力に頼ってきた。本研究は、この労働制約の起こりやすさはランダムなものではなく各農家の労働需要や収穫作業条件によって決まることを踏まえて、また雇用労働制約の有無による農家の対応をみるために、二重にロバストなAIPW推定量によってquadraticな生産関数を推定し、雇用労働制約の有無の違いによる家族労働と雇用労働の限界生産性を比較することで、雇用労働制約がある場合の家族労働の補完的な投入の程度について検証した。結果、雇用労働制約の有無によって有意な限界生産性の差は見られないものの、雇用労働制約が有ることで有意に生産量が低くなることがあきらかとなった。