抄録
大阪府では2005 年「大阪金融新戦略」において知的資産評価融資の検討がなされ「成長性評価融資」として制度構築はしたものの奏功しなかった。
本稿はその際に取得したデータを用い、知的資産ファイナンス再構築のために、正常先とリ・スケジュール先やデフォルト先を分けた非財務項目は何か、本融資制度が奏功しなかった要因は何だったのか、財務と非財務の間にどのような関係が見られるのか、について分析を行った。
正常先、デフォルト先、リ・スケジュール先、拒絶先の4群の平均差を比較したところ、非財務項目は全ての項目において有意差が確認でき、知的資産ファイナンスの再構築に向けて「ポジショニング」「事業優位性」「経営トップ」「資金繰り」「ターゲット市場」「販売促進」といった項目における、評価視点や基準を再考、あるいは抜本的な評価の見直しが必要との結論を得た。
一方、成長性評価融資制度への申込企業における、審査時における財務と非財務の間については、経常利益がプラスになっている先に限定すれば、売上高においては「生産サービス体制」と「資金調達」が、経常利益においては「原価コスト管理」と「資金計画」が、それぞれ影響を及ぼしていたことが確認できた。
経済産業省では「中小企業金融への役立ち」を念頭に政策を推進、地域金融機関と連携した実践モデル事業を展開しており、地域金融機関と連携した知的資産ファイナンスの推進を掲げており、見えないものを可視化し評価するという困難を伴いながら、リレーションシップバンキングの構築に注力している。産業経済から知的創造経済への経
済構造の変化に即する形で企業ファイナンスを構築することは、企業のみならず、地域、あるいはわが国経済の活性化や成長を推進する上でも重要である。大阪府の経験を、今後の糧にすべきである。