抄録
本稿の目的は、インタンジブルズの負の側面をいかにマネジメントすべきかを明らかにすることである。従来、インタンジブルズの研究は価値創造に焦点が当てられており、価値毀損についてはあまり注目されてこなかった。インタンジブルズの負の側面は多様な見解があり理論が確立されていないため、これらの見解を整理する必要がある。
最初に、インタンジブルズ自体に関する先行研究をレビューする。インタンジブルズの定義はさまざまあるが、本稿では、企業の競争優位を生み出す無形の源泉と定義する。インタンジブルズのマネジメントについては、インタンジブルズを複合的に管理する必要性、目的に合わせたインタンジブルズのマネジメント手法が提案されている。
次に、インタンジブルズの負の側面を検討する。インタンジブルズの負の側面には、企業価値を毀損するものと、リスクないし非金銭的な責任という2 つの考えが存在することを明らかにする。次にインタンジブルズの負の側面の事例を検討する。本事例には、リスクマネジメントを通じて管理が可能なものと管理が困難なものがあることを明らかにす
る。
最後に、リスクマネジメントで管理が困難な負の側面にいかに対応すべきかを検討する。最初に、先行研究で提案された負の側面のマネジメントの方法として、多角化を推進する見解を検討する。次に、負の側面への対応を3 つ提案する。すなわち、環境適応できるような戦略テーマを複数用意する、外部環境を取り入れた迅速な戦略策定をする、インターラクティブな内部環境を構築して創発戦略を生み出すである。