日本知的資産経営学会誌
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インタンジブルズの可視化に向けた統合報告の役立ち
日本企業の統合報告書をもとに
西原 利昭
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2016 年 2016 巻 2 号 p. 97-109

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抄録
 本稿の目的は、日本企業の統合報告書(2014 年版)の文献調査、三菱重工業株式会社、株式会社ローソン、株式会社野村総合研究所3 社へのインタビュー調査を通じて、インタンジブルズの可視化に向けた統合報告の役立ちについて考察することである。インタンジブルズとは、企業の技術やノウハウ、従業員の知識やスキル、顧客や取引先とのネットワーク、コーポレート・レピュテーション(評判)など、貸借対照表上に表れない無形の価値源泉をいう。インタンジブルズの可視化は、企業が自社の価値創造の源泉となるインタンジブルズを特定し、それを見える形で示すことで、インタンジブルズのマネジメントを効果的に行うために必要である。  また、統合報告とは、国際統合報告評議会(IIRC)が、2013 年12 月に公表した国際統合報告フレームワークの基本概念(価値創造、6 つの資本、価値創造プロセス)を取り入れた統合報告書をいう。はじめに、日本企業の統合報告書が、国際統合報告フレームワークの基本概念をどの程度踏まえて作成されているのかについて文献調査により現状を把握したところ、フレームワークの基本概念に準拠した統合報告書を公表している企業が10 社あることがわかった。次に、3 社のインタビュー調査と統合報告書の開示情報をもとに、インタンジブルズの可視化に向けた統合報告の役立ちについて考察した。その結果を踏まえ、統合報告がインタンジブルズの可視化に役立つ可能性があると結論づけた。
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© 2016 日本知的資産経営学会
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