日本知的資産経営学会誌
Online ISSN : 2758-7355
Print ISSN : 2758-6936
地域企業の域外進出と関係資産
内田 恭彦
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2017 年 2017 巻 3 号 p. 7-21

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抄録
本研究は地方の中小企業(地域企業)が進出を図る際に,関係資産を活用せざるを得ないが,その際成功するための地域企業の特徴,関係資産企業の特徴,関係調整の方法などを明らかにすることを目的としている。関係資産は定義上企業外部のもので,しかも基本的には所有していないものであり,その多様性と制御困難性を有するものである。したがって関係資産のマネジメントの理解は理論的にも実践的にも重要な問題である。従来知的資産経営研究においては関係資産については,情報機能など企業にとってプラスの側面が強調されてきたが,組織間関係論の資源依存パースペクティブによると,他企業などに過度に資源依存した場合においては,企業経営においてマイナス効果をもたらすことが理論的・実証的に報告されている。そこで本研究では山口県内に本社のある,もともとは地方の小さな事業体であったが,関係資産を活用して地域外進出に成功し,発展した4事業体のケースを分析し,関係資産マネジメント理論の構築に向けた貢献を企図した。結果は地域外進出する地域企業の特徴として進出先エリアにおける競合の製品に対して高品質で差異性が構築されていることが前提条件であること,資源依存パースペクティブから演繹されるように資源依存関係が台頭になるような関係資産企業を選択すること,また関係資産企業との資源依存関係を強化するには相互特殊投資が,また資源依存関係がアンバランスな際の組織間関係の調整方法としてはメディア活用,関係解消という選択肢が見出された。最後に考察として理論的含意および本研究の限界などが示されている。
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© 2017 日本知的資産経営学会
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