抄録
本稿は,エーザイ統合報告書のケーススタディをもとに,統合報告におけるインタンジブルズの情報開示と情報利用の展開方向を考察したものである。本稿の発見事項は次の3点である。
第1に,企業の情報開示には,情報開示そのものと,開示情報をもとにした情報利用という2つの目的があることを確認したことである。情報開示は,法令や外部のガイドラインなどに準拠した形での情報開示(アウトサイドイン・アプローチ)と,企業が戦略や計画の実行にあたってどのように経営管理を行って目標を達成したかについての情報開示(イ
ンサイドアウト・アプローチ)の2つに分類される。もう1つは,単なる情報開示に止まらず,ステークホルダー・エンゲージメントを通じた戦略策定への情報利用を意図したものである。
第2は,国際統合報告フレームワークの基本概念に基づいた統合報告書は,情報開示だけでなく,戦略策定への情報利用にも役立つことがうかがえたことである。例えばエーザイの統合報告書は,情報開示を目的にしているが,情報利用にも活用できる内容が含まれている。
第3は,統合報告におけるインタンジブルズの情報開示は,企業の戦略と結びつけた形で価値創造プロセスとして開示されることが望ましいということである。具体的には,バランスト・スコアカードの4つの視点による価値創造プロセスの中でインタンジブルズ情報を開示し,さらにそれを戦略マップとして提示することが効果的である。