2021 年 100 巻 10 号 p. 186-193
本論文では,25,000 Paという減圧条件において化学気相蒸着法(CVD)を用い,SiO2固体膜の成長速度分布を実験的および数値的に調査を行った。粒子生成を考慮しない場合の見かけの表面反応における活性化エネルギーは335 kJ/molであった。また,物質移動が見かけの表面反応律速と想定される,最大成長速度よりも上流側では,全ての実験条件において,数値解析によりCVDによる成長速度の実験結果を再現することができた。一方で,物質移動が拡散律速と想定される,最大成膜速度以降の領域では,数値解析結果によりCVDによる成長速度の実験結果を再現することができない部分があった。SEM観察による画像からは,本論文のCVDにおける物質移動には表面反応だけでなく粒子生成も含まれる可能性が考えられた。また,粒子生成の影響から,拡散係数が見かけの係数となる可能性があることも示唆された。今後,メンブレンフィルターを用いた粒子生成速度を推定し,さらに表面反応だけでなく粒子生成を考慮した数値計算を行い,成長速度分布を再現できるモデル化が可能となると考えられる。