2021 年 100 巻 8 号 p. 102-109
国内にある石炭火力発電所から採取した石炭灰フライアッシュに関して,6種類のペーパースラッジ燃焼灰(以下,PS灰:XA,XB,XC,YA,YB,YC)を溶出抑制剤として添加した際の異なるPS 灰添加率(0-30%)に対するヒ素(As)溶出挙動を調べた。さらに,ヒ素溶出メカニズムを解明するために,先に得られた実験結果に基づいて熱力学平衡計算ソフトウェア Fact Sage 7.2を用いてフライアッシュ中におけるAs含有化合物の推定と燃焼および溶出プロセスにおけるAs 含有化合物分布予測を行い,種々のパラメータ(温度,PS 灰添加率,微量元素濃度など)がヒ素溶出挙動の熱力学平衡解析に与える影響を評価した。結果として,燃焼プロセスにおいて生成されるAlAsO4(s) がフライアッシュ中に含まれる主なヒ素化合物であることが平衡解析により示された。また,PS 灰YBを添加率15-30%にてフライアッシュへ添加することで最も良いヒ素溶出抑制挙動を確認した。これはPS灰添加量が増えたことで溶出過程におけるカルシウム(Ca)量が増えた結果,Ca化合物Asとの化学反応が促進されたことにより,As固定量が増大したことに起因する。また,PS灰中に含まれるCaOにより溶出液pHが高まり,カルシウムとヒ素の反応を促し,沈殿物を形成することも明らかになった。