2021 年 100 巻 8 号 p. 127-134
微細藻類とりわけユーグレナによる有用物質生産の実用化が期待されている。微細藻類の生産性を高める上で,増殖促進剤の添加は,簡便かつ費用対効果の高い方策である。本研究では,リグニンを原料として得られる芳香族化合物バニリンの効果について検討を行った。ユーグレナの培養に対するバニリンの添加はホルミシス効果,すなわち低濃度では増殖促進したが,高濃度では増殖阻害をおこした。10 mg/Lのバニリン添加区において,バイオマス生産性が36.5%向上し,クロロフィルやカロテノイドの含有量も上昇した。さらに,バイオマス生産性を損ねることなく,脂質の収率を高めることが可能であることを,FT-IRを用いて確認した。