本研究ではNi-YSZのアノード極を持つSOFCにタール模擬物質を混合した燃料ガスを供給し,SOFCの劣化挙動を調査した。バイオマスガス化研究において典型的なタール構成物質とされているトルエンを3.1%水蒸気含有水素に添加した。発電特性を考察するため,トルエン添加濃度を0 mg/Nm3から1900 mg/Nm3まで変化させて定電流モードにて約30 時間の発電実験を実施した。また,開放端でのインピーダンス測定を行うことによりSOFC内部抵抗を評価した。トルエン無添加実験ではSOFCは良好な状態及び安定した発電が持続したのに対して,200 mA/cm2の電流を印加すると380 mg/ Nm3の低濃度トルエン添加においても電圧の降下が見られた。さらにトルエン濃度が高くなると電圧降下も大きくなる傾向があった。トルエン濃度1900 mg/Nm3の場合には,電圧降下が深刻する一方でアノード極表面に炭素析出した様子も確認できた。ただし,アノード極構造に重篤なダメージがない限り,発電性能は部分的に回復した。