2022 年 101 巻 11 号 p. 210-217
CO2の排出抑制のためには,炭素資源の転換時に炭素を安定な固体炭素として固定化することが望まれている。本研究では,多孔質炭素を用いて揮発分の二次分解で生成する析出炭素を回収し,燃料ガスと固体炭素を得る手法を提案する。活性炭は回分反応器内でのおがくずの熱分解において,揮発成分の二次分解挙動にはほとんど影響を与えないが,ガス成分の生成を促進する。おがくずに含まれる水素が水素とメタンに転換した割合である水素転換率は温度の上昇とともに単調増加し,800°C では32% に達する。500°C 以上では,活性炭表面上で優先的に揮発分が分解するため炭素分のほとんどを回収できることがわかった。炭素析出前後の活性炭のミクロ孔構造にほとんど変化が見られず,炭素析出はミクロ孔では起こらないことを示唆している。活性炭の代わりにおがくずの熱分解チャーを使用したところ,熱分解チャーに析出する炭素量は活性炭よりも少なくなったが,同様の効果を得ることができた。