本研究は,一都三県における住民の夏季の省エネ意識と行動の変化を東日本大震災後から経年的に調査したものである。省エネ意識は2012年から2016年にかけて低下傾向にあったが,2022年調査では向上し,2012年水準に戻った。特に,節電・ガスの節約への取り組みにおいて,2014年や2016年と比べて行動の変化が認められた。きっかけとして,東日本大震災の体験に加えて,光熱費の値上がりやウクライナ情勢による電気・ガスのひっ迫が人々の省エネ意識に影響を与えたことが示唆された。また,夏季のエアコンの使用に関する行動も変化しており,長時間の利用や26℃以下で利用する人が増加していることを確認した。これらはエネルギー消費に直結する行動変容であり,今後,省エネを促進する政策や社会的な普及活動,生活者の行動変容を考える上での検討課題となると考える。以上より本研究で得られた結果は,経済的・社会的変化時のエネルギー利用への関心の高まりを理解する一助となる。