2014 年 93 巻 10 号 p. 964-972
セルロース系バイオマスからのバイオエタノール生産の実用化に向けた酵素コスト削減のためには,(1)酵素生産コストの低減,(2)酵素反応時間24 時間で糖収量500 g- 生成糖/kg- バイオマス以上を得ることが可能な酵素カクテルの最適化,および(3)酵素回収の3つの技術の相乗的な改善が重要である。本研究では,以上の概念に基づき,酵素糖化技術の評価手法を考案し,その手法に基づいてセルロース系バイオマスであるエリアンサスをアンモニア処理した試料に対して市販酵素の性能を評価し,それに基づき酵素コスト削減のための実際的な目標を検討した。その結果,アンモニア処理エリアンサスからエタノール1 L を生産するための酵素コストとして10 円以下を達成するためには,酵素生産コストは1,000 円/kg酵素タンパク質以下,酵素添加量は酵素タンパク質/バイオマス重量比で1/100 以下,酵素の回収率は酵素タンパク質量基準で75 % 以上を目標とすることが現実的な指針であるとの結論を得た。