抄録
本研究では,一般にバイオディーゼル燃料と呼ばれている脂肪酸メチルエステルの生産工程において,製品の純度を高めるために導入されている蒸留精製処理に関して,その効果あるいは影響をグリセロリシス反応モデリングと実験によって系統的に調査し明らかにした。その結果,蒸留処理は純度を高めることができるが,グリセロリシス反応によりモノグリセリドが析出することや,蒸留温度を高めると過酸化物が生成してそれがただちに有機酸へ変化し,酸価を上昇させてしまうことなどがわかった。そのため,燃料の酸化安定性が低下することや,低温流動性も悪化することが明らかになった。低温流動性が悪化する原因として,酸化劣化によって融点の高いギ酸が生成し,蒸留温度が高いほどそれが高濃度となることが判明した。また,メチルエステル反応直後や水洗・乾燥工程直前の中間BDFを蒸留処理しても酸化劣化し低温流動性も悪化することがわかった。