2015 年 94 巻 4 号 p. 346-356
セルロース系バイオエタノールを安定に製造するためには,原料植物の品質管理指標が必要である。熱帯では,ネピアグラスを通年で栽培できるため,栽培期間を指標に用いることにした。同じ圃場で3,4,5,6および7ヶ月間栽培したネピアグラスを,それぞれ同じ条件でアンモニア処理を施し酵素糖化を行ったところ,栽培期間が長くなると糖化率は減少した。しかし,栽培条件が異なると,ネピアグラスは同じ栽培期間でも糖化率や成分組成にばらつきが見られたため,栽培期間のみを原料の管理指標とするのは適切ではないと考えられた。そこで,原料の成分組成と糖化率の単相関係数を調べた結果,原料のリグニン(チオグリコール酸法)(以下,TGAL と略記)と糖化率にやや強い相関が見られたことから,原料管理の指標にはTGALが適していると考えられた。さらに,糖化率を目的変数,各成分を説明変数として重回帰分析を行ったところ,TGAL,グルコース,粗タンパク質から,標準誤差3.50 で糖化率を予測できることがわかった。