2017 年 96 巻 11 号 p. 487-492
本研究では,二酸化炭素水素化からのギ酸合成に対するパラジウム微粒子触媒の触媒特性について検討した。パラジウム微粒子触媒はメタノール溶媒中で溶媒熱条件にて硝酸パラジウムを処理することで得,様々な反応条件において二酸化炭素水素化活性を評価した。その中で,反応圧力がターンオーバー数(TON)に大きく影響を与え,より高圧条件で反応することにより,反応時間増大に伴いTONが減少することが確認された。反応後の溶液をUV-Vis測定により解析したところ,反応圧力が高い条件で活性種であるパラジウムが反応溶液中に溶出していることが確認された。これらの結果から,反応時間による活性低下の原因が反応溶液へのパラジウム活性種の溶出であることが示唆された。パラジウム活性種の溶出を抑制するため,パラジウムナノ粒子触媒をシリカでコートする効果について検討した。ゾルゲル法によりシリカをコートし,シリカ源であるテトラエトキシシラン量を調整することで壁厚を制御したところ,反応後の活性種の溶出が大幅に減少することが確認できた。