日本エネルギー学会誌
Online ISSN : 1882-6121
Print ISSN : 0916-8753
ISSN-L : 0916-8753
資料
大規模風力発電電力利用水電解水素とCO2のメタネーションで製造した燃料の変換・輸送モデルの概算評価
西村 顕森山 達也嶋野 純
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 96 巻 9 号 p. 400-407

詳細
抄録

優れた風況が得られるアルゼンチンのパタゴニア地方に大規模に風力発電を設置し,得られた電力を水電解装置にて変換した水素を用いCO2をメタネーションでメタンに変換し,それを液化してタンカーで日本まで輸送するモデルのエネルギー生産性・収支,CO2循環可能性,投資回収を概算した。メタネーションで使用するCO2は日本でメタン利用により生成した分をパタゴニア地方に運ぶとともに不足分は南米から調達することとした。3000 kW級風車をパタゴニア地方のチュブット州とサンタクルス州に合計7.81 × 105台設置することを想定したところ,日本へ輸送可能な液化メタン量は熱量ベースで国内LNG輸入量の2.2倍であり,パタゴニア地方に大規模に風力発電を導入し,水素製造・メタン化して日本に輸送するモデルは十分にエネルギー生産性のあることが確認された。また,その際のエネルギー損失は64.7%となった。パタゴニア地方から日本まで輸送した液化メタン利用によるCO2排出量はパタゴニア地方でのメタネーションに要するCO2量の49.1%に留まり,不足するため,南米から別途調達するシステムが必要である。なお,本試算は一部大胆な仮定に基づくため,今後さらなる精査が必要である。

著者関連情報
© 2017 一般社団法人 日本エネルギー学会
前の記事 次の記事
feedback
Top