日本エネルギー学会誌
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ペルシャ(アラビア)湾岸諸国における経済成長と大気汚染 ―環境クズネッツ曲線仮説を軸に―
辻本 政雄
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2018 年 97 巻 1 号 p. 16-22

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抄録

本稿では,ペルシャ湾岸7ヶ国における経済成長(一人あたりGDP)と大気汚染(一人あたりCO2 排出量)の関係に注目する。特に,各国別及び時系列(1980~2014年の35年間)のデータ,並びに,回帰分析を用い,湾岸7ヶ国における環境クズネッツ曲線仮説(EKC仮説)の妥当性を検証し,以下を述べる。第一に,当該条件下におけるEKC仮説の妥当性は限定的であり,むしろ,比例増加の関係が支配的である。第二に,仮説の限定性の背景要因として,環境負荷軽減に向けた制度上の課題,すなわち,(1)政治的制約,(2)環境親和性に欠くソフトな予算制約,(3)廃棄物処理・管理上の不備等が挙げられる。しかし,第三に,仮説の限定性は同時に,環境負荷軽減に向けた諸々の事業への更なる参画を通して,日本の国際的プレゼンス強化を図る好機を示すものと考えられる。

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© 2018 一般社団法人 日本エネルギー学会
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