日本エネルギー学会誌
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技術論文
重質油から分画した飽和分の分子量測定法
佐藤 信也
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2018 年 97 巻 2 号 p. 45-52

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抄録

Cold Lake産オイルサンドビチューメンよりカラムクロマトグラフィー法(JPI-5S-22-83)で分画した飽和分(CL)の数平均分子量(Mn)を蒸留ガスクロマトグラフィー(GCD,ASTM D 7169 準拠),凝固点降下法,ゲル浸透クロマトグラフィー (GPC)で比較した。 GCD法でMnを推算する場合には,GCDで得られたクロマトグラムがベースラインに戻っていること,および沸点と分子量の相関が事前に分っていることという条件が必要である。後者については,アルカンおよびアルキルベンゼンで式量の対数と沸点の間に一次の相関があることが利用できる。CLの試料ではクロマトグラムの終点がほぼベースラインに戻っていることから,最初の条件も満足していると見なした。CLのH/C原子比(1.78)はアルカンよりもアルキルベンゼンの値に近いことから,アルキルベンゼンの沸点-分子量の関係を用いてMn = 400と推算された。 凝固点降下は較正曲線を用いないので,より基本的な分子量測定法である。本報告では17.2,8.63,1.57 g/kgの濃度のp-キシレン溶液,約10 mLを用い,凝固点降下による分子量測定を行った。その結果,CLの分子量は370と推算された。 さらに,従来法であるゲル浸透クロマトグラフィーによる測定を行った結果,ポリスチレンを標準物質とした場合の分子量は490と推算された。 これら3種類の測定法を比較すると,GCDによる方法は,現状では飽和分にしか適用できないが,最も簡便な方法である。凝固点降下法は原理的にどのフラクションにも適用できるが,多量の試料が(約150 mg)必要,概ね分子量約500 以下の試料にしか適用できないという制約がある。GPC法によるMnはこれらの測定法の中で最も不正確であり,GPC法で信頼性の高い分析を行うためにはポリスチレンに代わる標準物質が必要である。

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© 2018 一般社団法人 日本エネルギー学会
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