日本エネルギー学会誌
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特集:JCREN(論文)
A LCA on the H2S and HCl Removal Procedures Using in HAS-Clays
Kiyoshi DOWAKI Shohei KURODAHidetoshi SARUYANoboru KATAYAMAYuna SEOTomoyuki ISHIYAMAKiyofumi SATOMitsuo KAMEYAMA
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2018 年 97 巻 7 号 p. 160-170

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抄録

本論文は,バイオマスからガス化プロセスを経て,燃料電池アプリケーション用のH2燃料について,特に,燃料規格として重要となる不純物除去に関する影響をライフサイクルアセスメント(LCA)により評価を行った。不純物除去で使用される吸着剤や触媒に含まれる金属酸化物の使用は,LCA指標において大きな影響を及ぼすことが示唆されている。ここでは,ガス化合成ガスからの不純物の除去のため,HAS-Clay(非晶質含水アルミニウムケイ酸塩及び粘土からなる合成物質)を吸着剤として想定し,H2S やHClの吸着試験ならびにプロセス設計により,1 Nm3のBio-H2を機能単位として環境影響指標の評価を行った。なお,本研究で検討する環境影響指標は,地球温暖化(GWP)及び金属資源枯渇(ADP)指標とした。 まず,HAS-Clayによる吸着試験においては,H2S及びHClは,分離除去できることが判明した。ただし,HClの場合には,CaCO3と混合させた吸着剤の性能が高いことが分かった。また,HAS-Clayは圧力スウィング吸着方式による水素精製で用いられるため,水素精製操作と同時あるいは連続的に,不純物の完全除去を目指したプロセス評価を行った。 この結果,H2Sについては,吸着剤としてHAS-Clay及びZnOあるいはFe2O3とした場合,GWPは,従来ケースの 19.4 g-CO2/Nm3-Bio-H2に対し,3.18あるいは1.43 g-CO2/Nm3-Bio-H2となった。また,ADPについては,従来ケースの2.75 × 10-2 g-Sb eq./Nm3-Bio-H2に対して,7.63 × 10-6 あるいは3.42 × 10-6 g-Sb eq./Nm3-Bio-H2という結果が得られた。 一方,HClにおける環境影響指標については,HAS-Clayの再生利用,あるいは粘土(天然資源)による利用を想定しなければ,環境上の利益を得ることができない可能性あることが示され,同様な特性を持つ吸着剤の選択や運転条件の検討が必要であること示唆された。

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© 2018 The Japan Institute of Energy
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