2019 年 98 巻 5 号 p. 106-109
本論文は,均一系酸触媒による植物油脂(トリグリセライド)のメタノールによるトランスエステル化反応において何が総括反応速度を支配する因子かを明らかにしようとするものである。本反応系は,メタノール液滴が油脂連続相に分散したものであり,触媒の大部分はメタノール液滴中に溶解し,存在する。筆者らは,以下のプロセスに注目し,同時拡散- 反応モデルを構築した:(1)油脂- メタノール界面における油脂のメタノール液滴への溶解,(2 )メタノール液滴に溶解したトリグリセリドのメタノール液滴内における内部方向拡散,(3)プロセス(2)と並行して生起する油脂のトランスエステル化。このモデルを検証するため,まず,メタノール/油脂/2-ブタノン/硫酸の均一系で298,308,323 Kにおけるトランスエステル化反応の速度を決定した。続いて,通常の2相系で298,308,323 Kにおけるトランスエステル化反応の速度を測定した。この2相系の結果は,均相系で得られた速度式と同時拡散- 反応モデルによりよく説明された。また,本論文の条件下では,総括反応速度は真反応速度で表されることがわかった。