本研究の目的は,地中熱ヒートポンプの導入により効果的にCO2排出量を削減する自然・社会条件を明らかにすることである。本研究ではオフィスビルの空調におけるGSHPsのライフサイクルにおけるCO2削減可能量を様々な自然・社会条件下で推計している。既存空調システム,気候,系統電力のCO2排出係数,建物規模の4つの条件を組み合わせることで640通りの導入パターンを想定している。各パターンのCO2削減可能量に基づき,GSHPsの導入により効果的にCO2排出量を削減できるパターンを分析し,その結果,640通りのうち,約40%(250通り)でGSHPsによるCO2排出削減が認められている。特に,以下のパターンにおいてGSHPsの導入は高いCO2削減効果をもたらすことが示唆されている:(1)GSHPs が吸収式冷温水機を系統電力のCO2排出係数が低い地域で代替する,(2)GSHPsが空気熱HPを寒冷地において代替する。さらに,将来における系統電力のCO2排出係数の低下とGSHPsの効率改善を考慮して感度分析を実施している。