回路実装学会誌
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高周波多層プリント配線板用熱硬化型ポリフェニレンエーテル樹脂の特性評価
新井 雄史石井 義行黒木 正勝横山 秀久木下 昌三片寄 照雄
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1995 年 10 巻 3 号 p. 153-160

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抄録
良好な誘電特性と耐熱性を兼ね備えた多層配線板材料として, 熱硬化型ポリフェニレンエーテル (PPE) 樹脂〔S2100〕を開発した。Eガラスクロスを使用したS2100プリプレグは, パウダーフリーで樹脂流れ性が良好であり, 両面銅張積層板および多層配線板が問題なく成形できた。S2100積層板は1MHzにおける誘電率が3.5, 誘電正接が0.003, ガラス転移温度210℃であり, ショアデュロメータ硬さおよび銅箔引きはがし強さが200℃でも低下しないため, 低誘電率, 低伝送損失, かつワイヤボンディング耐性が求められる最近のLSIパッケージ材料に適する。S2100積層板はドリル加工性が良好で, ドリル磨耗量, スルーホール内壁粗さ共にFR-4より小さかった。S2100の誘電率と誘電正接の温度依存性を1GHzにおいて測定したところ, -20℃~80℃の温度範囲ではそれぞれ3.3, および0.005の一定値であった。GHz領域の伝送損失を測定したところ, S2100は7GHz以下の領域において0.1dB/cm以下の低伝送損失性を有することがわかった。プレッシャークッカーによる1000時間の超加速信頼性試験では, S2100積層板が0.4%という低い吸湿量であるため, 誘電特性が安定であるのみならずはんだ耐熱性でもFR-4より優れていることが示された。銅イオンマイグレーション試験では, S2100積層板はFR-4より常に1桁高い絶縁抵抗値を保った。多層配線板を作成し温湿度サイクル試験, はんだ耐熱性試験, オイル浸せき熱衝撃試験, および冷熱衝撃試験を行ったところ, S2100はいずれの試験においてもまったく問題を生じなかった。
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© 一般社団法人エレクトロニクス実装学会
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