抄録
本研究では,都市圏活断層図(国土地理院),長期評価(地震本部) から各種データを収集し,日本全国の撓曲帯上の土地利用について334 箇所を対象に調査を行った。撓曲帯の傾斜でみると,0◦ ≦ 傾斜< 5◦ では28% を占めていた住居・商業建築物が20◦ ≦ 傾斜< 25◦ では9% に減少し,0◦ ≦ 傾斜< 5◦ では11% に留まっていた森林が20◦ ≦ 傾斜< 25◦ では68% まで上昇するなど,傾斜の変化とともに土地利用の特徴にも変化が見られた。各地域における傾向を分析すると,北海道地方や東北地方,中部地方では他の地域に比べて農業などの第1次産業における生産量が大きいが,撓曲帯上の土地利用でも同様の傾向が出ており,それぞれ農業用地として37%,41%,43% が利用されていた。その一方で,関東地方や近畿地方などは人口が集中している都市を抱えていながら,住居・商業建築物や公共建築物などの人的利用が見込まれる施設の割合が59%,61% と非常に高くなっていた。政令指定都市に位置する撓曲帯に絞ってみると,撓曲帯上の土地の70% が人的利用の見込まれる施設に使用されていた。