1990 年 54 巻 5 号 p. 42-47
京都は長い歴史をもつ都市であり, 残されている資料も多いにもかかわらず, その周辺山地の植生景観の変遷については不明な点が多い。絵画は, そのような過去の植生を考える上で参考になるものであるが, それがどの程度の資料性をもっかを述べることは難しい場合が多い。ここでは, 江戸時代の画家の中でも, 写生的な画風でよく知られている円山応挙の初期の作品を通して, 江戸時代中期における京都近郊山地の植生景観を考察した。その結果, そこには当時, 低植生地あるいは植生自体が無いような所も広く見られ, 比較的よい森林は, 社寺有地などの一部以外には少ないなど, 今日とは大きく異なる植生景観が見られたものと考えられる。