我国で世界に誇りうる風景観と云えば第一に富士山, その第二に瀬戸内海をあげることが出来る。そこで富士山については既に本機関誌『造園雑誌』第54巻1号 (1990) に於いてその文化的価値を中心にその歴史的な考察を行ってきた。そこでその第二のステップとして, ここに瀬戸内海についても同様な観点から究明して見たい。即ち冨士山が孤高の山景美とすれば正に瀬戸内海は白砂青松の海景美と云える。このような伝統美が欧米化の風潮の波に圧倒されて兎角忘れ勝ちになっていることに反発を禁じ得ないし, 又その保全の手段方法についても一考して見たい。