抄録
世界初の国立公園となったイエローストーンは, 自然環境を保全し公共的利用を確保するために成立したと言われている。本論では諸説ある成立過程を, これまでの研究成果にもとづいて整理。検証するとともに, 真実よりも理想化されたイメージの方が一般に知られるようになった理由を探った。まず成立過程に関しては, 自然環境の保全ではなく間欠泉などロマンティシズムやナショナリズムの対象となるモニュメントの私有化を阻止し観光を振興するのが動機であることが明らかになった。その後, 公園局などの関係者と公園に夢を託す人々による国立公園の成立過程やその理念の理想化が進められ, 国立公園の現実の「自然」と一般の人々の描く幻想としての「自然」とのギャップを助長する結果となった。