造園雑誌
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近代における温泉地空間構造の変遷に関する考察
下村 彰男
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1992 年 56 巻 5 号 p. 241-246

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抄録

明治以降の近代観光の展開の中で, 温泉地の滞在空問としての魅力低下の原因の一つとして, 温泉地空間の構造性の弱化があげられる。本報では, 近世において形成された温泉地空間の構造性が, 交通機関や土木.建築技術の進展, 観光の大衆化 (大量化) などの影響を受けて, 徐々に損なわれてゆくプロセスを明らかにすることを目的とする。対象地として, 空間構造の変容程度に差異のある熱海 (大), 伊香保・草津 (中), 城崎 (小) を取り上げ, 空間構成 (要素+構造) の変遷を調査し, 分析を行った。その結果, 温泉地が近世の湯治場から明治.大正の保養温泉地, そして昭和の温泉観光地へと展開する過程で, その空間構成は, 開放系化, 集合体化, 均質空間化が徐々に進み, これら各ベクトルが複合して, 構造性の弱化が進んだことが明らかとなった。

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