1999 年 63 巻 5 号 p. 743-748
本論文は, 立山黒部が電源開発と共に観光開発され, わが国を代表する自然探勝型の観光地と成るまでの歴史的展開過程と, その過程の中で起こった開発と自然保護との論争を明らかにしている。具体的には, 立山黒部アルペンルートの形成過程は, 電源開発準備期, 電源開発本格化・観光開発準備期, 行政主導開発期, 観光開発拡大期に分けられること, 大町ルートの完成により立山ルートの観光開発が優先されたが, アルペンルートが全線開通すると自然保護の動きが活発化し, 自然保護環境を巡る論点は, さらに, 開発が進むに連れ, 風景保護といった漠然としたものから, 動植物の保護, 工事後の緑化修景等個別の問題点に変化していったことなどである。