2017 年 2017 巻 198 号 p. 55-66
平均寿命の地域ごとの差異を理解することは、健康格差の地理的な分布状況を観察するために重要である。地域ごとの平均寿命の差異は、高齢化の地域的な分布と相関があり、生命保険業界に影響を与える可能性もある。本プロジェクトは小地域のベイズ空間分析を用いて、1980年から2010年の期間の日本の市区町村レベルでの平均寿命を推定したものである。この期間を通じて、平均寿命は毎年0.3%ずつ増加し、2010年には男性78.7歳、女性85.0歳であった。多くの地方自治地体は全国平均からさほど差異は見られなかった(2010年の四分位範囲(IQR)は、男性78.1~79.3歳、女性84.4~85.5歳である。)が、いくつかの特異な自治体では、最大で5歳程度平均値よりも短い、または長い平均寿命であった。東北地方の平均寿命は、日本の他の地域よりも短く(男女とも、最も低い五分位に入る)、かつ強い空間的相関を持っていた。日本の平均寿命の地域格差を解消するためにはさらなる取り組みが必要であり、特に北東部と地方に焦点を当てる必要がある。