2021 年 13 巻 1 号 p. 79-85
血液透析患者では,食事管理や高リン血症治療薬の服用により血清リン濃度を適切に管理することが重要である.しかし,血清リン濃度の管理不良を引き起こす患者背景についてはこれまで十分な検討がなされていない.本研究では,札幌南一条病院の血液透析患者を対象として,血清リン濃度管理における年齢,性別,糖尿病合併の影響を検討した.また,血清リン濃度の管理が不良である患者における高リン血症治療薬の処方状況や薬剤費についても併せて調査した.その結果,「若年齢層の男性」ならびに「糖尿病を合併する患者」で血清リン濃度が目標値を超える傾向にあった.また,血清リン濃度の管理が不適切な患者群では,高額な高リン血症治療薬の併用が顕著であり,このことが薬剤費の増加につながっていた.したがって,薬剤師による積極的な介入を通して血液透析患者の服薬アドヒアランスを向上させることが,適切な血清リン濃度管理と薬剤費抑制に必須である.